2004,8,15
車で片道13時間の帰省は、いまさらのことではあるが遠いと感じた。折角、東北は福島へ帰るのであれば地元のトレイルを走ってみたいと思うのは当然の成りゆきである。そこで、貴重な一日をライディングにあてることにした。私の実家から丁度中通りを挟んだ反対側に吾妻小富士が見える。小さな頃は、良く車で上ったことがある場所ではあるが、そこまで自転車ではまだない。私の中の好奇心がブルッと震えた。
吾妻小富士のふもとに浄土平がある。観光スポットのビジターセンターがあり、そこから小富士の山頂までは300mぐらい登る。道は木の階段ができていて、観光客用にだれでもが登ることができるようになっている。浄土平への道のりは、福島市内の西側からの上りで、磐梯吾妻スカイラインがある。途中より有料となる道であるが自転車も150円出せば走ることができる。登りはじめてから30kmで浄土平に着く。車ならば4〜50分というところか。途中、信夫温泉、高湯温泉と二つの温泉があり、そこからはどの場所でも見晴らしは最高で高度を増す度に、その感激度はうなぎのぼりになる。
浄土平は標高1630m,吾妻小富士においては標高1707mに至る。1500mぐらいからは火山特有のガレた岩肌が空のブルーとのコントラストをなし、呆然と佇むしかなくなるような絶景である。
今回はまず磐梯吾妻スカイラインのオンロードを上る。1300mの高度差を30kmの道のりで上ると、浄土平に着く。この高度差は始めてである。丁度逆瀬川から六甲山上までの倍である。走れない距離ではない。実際思ったよりも確実に距離をかせぐことができた。1000mを越すあたりからは、空気も冷たく強い日射しはあるものの汗もそれほどかかない状態である。咽のかわきもさほど感ぜず、最後の浄土平への急坂で始めて水分を補給した。
ひと休みした後に、下りの登山道に入る。ガレた足場で乗車率も低いが、吾妻小富士の頂上付近に小さく人陰が見えるようなオープンな景色の中を走っていると、日本にいることを忘れてしまう錯角に陥る。しばらくガレた場所を走ると徐々に草木が迫ってくる。いつの間にか低木の高山植物に囲まれ道も回りから隔絶される。気がつくと、笹薮の中を歩いていて草が行く道をさえぎってしまう。しかし、足下にはしかっりした山道があり、それを頼りにさらに進む。中盤は笹薮の中をひたすら進む状態だ。登山道には期待はしていなかったものの、少しがっかりしていると、少し道が開け緩やかな尾根道のような感じになってきた。道は腐葉土に覆われやわらかく、木の根っこも少なくなる。そこから1kmほどもあっただろうか、一旦乗車するとジェットコースター状態になり途中一端休憩を入れるしまつとなる。こんな山深いところで走れるところが見つかるということは、言ってみれば、サーファーのビッグウェーブと同じくらい感動があるのだ。しこたま、シングルトラックに集中しているとやがて下りがきつくなり、しだいに乗車率が落ちてくる。かなり下ってきているのでもうじき温泉に着くのではと思いきや、近くで車の音がする。細い舗装路にでる。左手奥に古い藁葺き屋根の民家が見える。微温湯温泉だ。
ヌルユオンセンと読む。名の通り湯温31.8度というヌルさである。玄関に広い土間のあるところが入口となる。思わず故里へ帰ってきたようなそんな気持ちにさせる。若い女性の店員さんに“自転車なんですが、玄関先に置かせてもらってもいいですか?”と尋ねると、“自転車ですか?どこからいらしたんですか?”と私の質問に答える前に質問してきた。“浄土平からです。”と答えると、“へー、山道をこられたんですか?”と半信半疑にうなずいた。いつも自転車のおかげで会話のきっかけがつかめる。しばらく会話を続けた後、入浴した。入浴料500円、タオル250円。カラフルな温泉に似合わないタオルであったが、温泉名が印刷していないのが残念だった。湯槽は6帖ほどの小さなものだった。先に入ったお客さんが湯槽を占領していて、自分の番になるのに少し時間がかかった。確かに入ると温泉プールに入ったように少しだけ温かさを感じる程度で、いつまでも浸かっていられるような、長風呂好きにはもってこいの温泉である。筋肉痛、腰痛、皮膚病、やけどなどに効能があるらしい。
温泉でくつろいだ後は、いよいよ最後のライドである。ここから先は、細い舗装路がメインで下から上ってくる車に注意しながらひたすら下るのみである。途中砂利道になるものの快適に下れる道である。下りを下り切ったところに車がありそこがゴールとなる。
今回は思いつきのライディングではあったが、思いがけず充実した走りを体験することができた。なによりも、1600mを越す標高でのライディングは感動ものであった。